日記 2020年9月13日 日曜日

2020年9月13日(日)

 

久しぶりの労働がクソ忙しいのはわかり切っていたのでそれが逆に興奮を呼び全く眠れなかった。眠れなかった理由は他にも10個はあるけどとにかく気付けば日が昇っていた。

顔もぱんっぱんに浮腫んで瞼も晴れている状態でトイレで経血を確認した。できたら労働終わりに生理になっていたかった。

 労働自体は苦じゃなかった。空気を読んで生理痛もなかったし思ったより持病が響かなかった。多分私は身体にプレッシャーをかけるのがうまいんだと思う。だって勤務時間を過ぎて帰路に着いた瞬間に歩けなくなるほどの痛み。殺す気か。

 

閑話休題

 

 ケミカルブラザーズの来日公演が中止になった。私にとって生きる糧となる今年一番大きなイベントだった。

 

ケミカルブラザーズ来日公演が延期ではなくて中止になったことのショックがデカすぎて死ぬ 希望のほとんどが消え去ってしまいました 来日公演が発表された寒い日も暑い日もずっと聴いていました どうしたらいいのさ

戻ってくる24,000円、メチャクチャちっぽけだ たった24,000円で2日間も生でケミカルブラザーズを観れてたはずだった

午後4:27 · 2020年9月13日(Twitterより)

 

やらないだろうなとはファン全員が想像したことだと思う。ただ、延期じゃなくて中止という事実にショックを受けている。3月に行われるはずだったニューオーダーの来日公演は延期だったので当たり前のように今回も延期だと思っていたのだ。

 払い戻して24,000円。「金」としてみても別にラッキーくらいの値段で、たとえ10万円が手に入ったとしても中止になってよかったとは思わないだろう。私にとってそれほどの価値があった。

 払い戻すためにはまずチケットを発見しなければならないことを知ったので気持ちを整理するために散歩がてらコンビニへ向かう。

 

 ケミカルブラザーズとの思い出

パリ行きの飛行機の中で不安に震えながら夜を過ごしていた ぜんぜん眠くないのに真っ暗になった機内でタッチパネルをいじっていると、ケミカルブラザーズのNo Geographyが目に入り、「あれ、ケミカルブラザーズあるやん」と思った。新譜が出た当初サラッと流してあまり印象に残っていなかったので聴き流すつもりで再生ボタンを押した。眠るつもりで目を閉じた。

ケミカルブラザーズはまさしく「色」を私に与えてくれた。大袈裟じゃなく、これが世界なんだなと思った。なんというかパリに着いてから日本に帰るまで「どの国に居ても生活が続いているんだ」という地に足のついた実感があったが、あのKIX国際線の、朝の、母と食べたチョコクロと、別れと、朝の光と、ここが世界の出入り口であり最先端なんだと思ったあの時の情動は一生に一度の体験だったと思う。ブラックホールを突き抜けていくような、そういった不思議な「通過点」としての高揚感があった。No Geographyはまさしく_時空の歪み、狭くて細い、急な流れによって生ずる時間の歪みなど_を体現したようなアルバムだと思った。カラフルな球があちこちを跳ね回り加速していく そんな映像が脳内に流れていた。

 

パリの夕焼けを思い出す 少なくとも今見てる「こんなん」じゃなかった。思い出せないけど。

気色悪い夕焼けだな。と思った。どこにいても、夕陽は形を捉えられない。

 

いたたまれない気持ちが拭いきれなくなりEve of DistractionのMVを初めて観た。思ってたんと違いすぎてかなり拍子抜けした。MUSEのknights of CydoniaのMVを観た時もこんな感じだった。揃いも揃ってどうしてイギリスのMVってこんなにダサいんだろう…初見がMVじゃなくて本当によかったと思う。なんで自分はダサいやつが好きなんだろう。

 

思ったところで、涙が出た。ほんとうに辛かった。生で見たかった。踊りたかった。

 

そして、半ば自棄になり、No Geographyを改めて再生し、今見ている夕陽に目を焼かれて仕舞えばいいと思い夕陽を直視した。すると、曲が流れていたはずの右耳のイヤホンからブチブチッという音と共に少しずつ音が途切れていって、終いには何も聞こえなくなってしまった。なんつータイミングだよ。勘弁してよ、明日にしてくれよ。

 

結局死ぬほど歩いて向かったコンビニではチケットを発券することができず、生理痛が酷くなり立っていられなくなったので親に迎えに来てもらった。その先に寄ったスーパーマーケットの魚がトチ狂ったんかというほど安く売られていたので鯛の頭と鰤の切り身(二つで80円くらい)を買って家で鯛出汁を作って飲んだ。暖かい。ケミカルブラザーズのこととかすぐにどうでも良くなってしまった。というより、遮られてしまった。

 

さて、私にとってケミカルブラザーズは世界を切り拓いてくれた存在そのものです。今回が駄目だったとしても、次回も必ず参加するし、日本に来ないのなら私が向こうまで行きます。

あの年、私は19歳で大人になるのが本当に嫌でフランスで野垂れ死ぬ予定でした。英語もフランス語も単純なものしかわからない私が1週間も誰の助けもなく生きていけるわけがないと思って見切り発車で飛行機のチケットを買いました。フランスに行って死ぬと決心した日から私は自傷行為もしなくなったし強迫性の妄想に憑りつかれることもなくなった。性格は明るくなったし「どうせ死ぬから今のうちに」とアグレッシブになれた。睡眠の質も改善されたし何事にも感謝するようになった。死に極限まで近づくことで生を感じるというエロティシズムを知ったのはパリだけど、私はその手法を知らない間に取り込んでいました。

死ぬという決心を簡単に折ってくれたのがケミカルブラザーズです。別に、パリで何もできなくっても、外に出るのが怖くてホテルに籠りっきりになってもケミカルブラザーズを聴いて過ごせばいいやと思ったほどでした。窓を開けて風邪を通してくれたのは彼らです。おそらく私の一番大切な部分を作り上げてくれた一要因だと思っています。

 

 ちょっと話題ズレるけど、どうしてパリでの思い出が私の核に結び付いているかというと、私自身しかその場にいなかったからだと思います。もちろん支えてくれた親や親戚はいるけど、ほかの人間はほとんど不関与だったので、何をしてもフィードバックは自分を媒介して展開されていました。そこでの追求を飽くまで楽しめたのは、孤独のメリットだと思いました。孤独は自己愛の結果と綴ったあの時の私は間違っていないよということです。

 

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未だにあの時の情動に名前を付けられないでいる

 

ケミカルブラザーズを聴くということは、私の人生を肯定することに繋がっているのです。次の機会があれば、私は今回の無念を晴らす勢いで誰よりも楽しみます。それまでに、大人を肯定し、私を肯定し、装いも、思想も、生き様も自分が納得するものに仕上げておきます。なので、思い切り飛ばしてください。その時を心から楽しみに待っています。

 

おしまい